公社からのお知らせ
第16回 フードコミュニケーター 森脇 菜採 氏
今回のリレーインタビューは、フードコミュニケーターの森脇菜採さんです。
道の駅しょうなん農×食アドバイザーとして、
大人気のソフトクリームを考案された森脇さん。
柏の農業と柏の魅力について、お話を伺ってきました!!
お 名 前 |
森脇 菜採 (もりわき なつみ) |
ご 所 属 |
フードコミュニケーター(フードコーディネーター・製菓衛生士) |
プロフィール |
都内での活動を経て、柏市に移住。 「食を通じて柏の魅力を伝えたい」という想いから、地元農家や飲食店と連携し、柏の食材を使った商品開発に取り組む。 柏の野菜を活かした料理教室を主宰し、大人や子供対象の食育活動にも力を入れている。 また、柏の大きな魅力の一つでもある農業のPR活動も行っている。 現在、柏市役所ホームページにて毎週火曜日ブログにて情報発信中(農×食×人コーナー担当)、かしわ市民大学 農×食クラスコーディネーター、道の駅しょうなん 農×食アドバイザー、柏市総合地方卸売市場審議委員 |
―道の駅しょうなんでソフトクリームなどをプロデュースされていらっしゃいますが、8月3日から期間限定で発売されているソフトクリームもとっても美味しそうですね。
はちみつ×ジンジャー味のソフトクリームで、これはもう大人女子に是非食べて頂きたいです!
葉ショウガの下の根の部分(根生姜)を使っているので、葉ショウガよりも代謝促進成分などが多く含まれていて、ちゃんと体の中から効くんですよ。
―お店ではあんまり下の部分って見かけないですよね。
市場では商品価値がないので、ほとんど出荷されないんですよ。
農産物は、どんなに頑張っても100%正規品として出荷できるわけではなく、どうしても、規格外品が出てきます。でも、葉ショウガの下の根生姜の部分はごつごつして扱いにくかったり、見た目が劣るというだけで、成分としてはとても優秀なんです。
それで、ソフトクリームに活用できないかなと思って作ったのが、今回のはちみつ×ジンジャー味なんです。
―そうなんですか!早速食べなくちゃ(笑)
野菜や農業の事に大変お詳しいですが、森脇さんは農家のご出身なんですか?
いえいえ!全然違うんですよ。柏に来て興味を持ったんです。
―都内にお住まいだったんですよね?
はい。都内にいる頃、偶然どなたかのブログで手賀沼の写真を拝見したんです。それが、なんともリゾートみたいで本当にきれいだった。聞いたことのない地名だったけれど、調べてみたら東京から近いことが分かって。それで、ちょっと行ってみようかなと手賀沼に遊びに来たんです。
―リゾートですか。いらっしゃった手賀沼は思った通りでしたか?
思った以上でした。ちょうど休憩しようと思って道の駅しょうなんに立ち寄ったんですが、人も野菜も一杯でとっても賑わっていました。「柏って東京から30km圏内なのに、こんなに色々なものがとれるんだ!すごい!!」って感動したんです。
手賀沼の開けた景色に、いろんなお野菜。しかも、一大稲作地帯もあって…。ここ、本物だって思ったんです。
―確かに、柏駅から少し離れだけで、手賀沼も畑も田んぼもある。珍しいまちかもしれない。
そうなんです!!柏駅周辺の風景も、手賀沼周辺の風景も一つの市内に存在することに衝撃を受けたんですよね。それで、引っ越してきてしまいました。
―ありがとうございます! 引っ越されてすぐ農業に興味をもたれたんですか?
最初は素材としての野菜を好きになりました。そのなかで、農家の人と仲良くなりたいなと思って、直売所や畑に通うようになりました。
―野菜を好きな方は多いと思いますが、そこで農家の方に会いたいと思う方はそんなに多くないですよね。
なんだろう。それまで野菜を選ぶ基準って、店頭表示か価格しかなかったんです。良いものを食べようと思っても、産地とか、オーガニックかどうかくらいでしか選べなかった。でも、柏に来てみたら、農薬を使ってるかどうかとか価格だけではなくて、畑に行ってお話を伺ったりすることができて、表示だけでは分からないたくさんの情報を得られたんです。
―なるほど。柏は、選ぶための情報を得ることが出来る環境なんですね。
丁寧に整えられた畑の野菜はやっぱりきれいで美味しいし、反対にワイルドな畑も野性的で美味しい。どちらがいいとかではなくて、それぞれに良さがあって美味しいんですよね。それを柏は実際に見て感じて知ることが出来るんです。
農薬も良い悪いじゃなくて、使う側・受け取る側の意識の問題だと思うんです。基準をきちんと守ってやっている人もいれば、もしかしたら無頓着な人もいるかもしれない。買う側がちゃんと考えて、ちゃんと理解して判断して選べばいいことなんですよね。
実際に会って話したりすると、「この人はこういう考えなんだ」って少しずつ分かってきて、今まで一部しか見てなかったな、何も分かってなかったんだなと感じるようになりました。
―野菜を好きになって、農家の人に会いに行って、さらに今は柏の農業をPRもされていますよね。
会う人会う人、みんな良い人で、頑張っている人もたくさんいらして、応援したいなと思うようになりました。
最近は増えてきましたが、柏市内のレストランで柏産の野菜を使っているところは少なくて、すごくもったいないなって思っていました。市民の方と話していても、柏産にこだわっている人は少なくて、スーパーで野菜を買われる方が多かった。それって、畑があまりない東京と同じですよね。それも一つの選択肢ですけど、柏の場合近くにあんな野菜もこんな野菜もあるのに、知らないで買っているんだったらもったいないなって。
だったら、知ってほしい!知らせたい!それがきっかけで、柏の野菜や農家さんをPRし始めたんです。
―PRの際にどんなところに力を入れてらっしゃるんですか?
最初は自分が良いと思うものを「これ見て!知って!」という感覚が強かったんですよね。でも、例えば、農薬を使って集中的に一つの野菜だけを作ればコストも下がってたくさん出荷できます。反対に、無農薬で草を取りながら育てたら、出荷量は少ないだろうし価格も上がりますよね。それってどちらかが正解なんじゃなくて、どちらもメリットがあるものだと思うんです。
こだわりのシェフがいるようなお店なら、どんな野菜が来ても美味しく調理してくれるけれど、効率的な手法でたくさん作られる野菜がなかったら、チェーン店だったり、パートさんが調理して同じ価格で同じレベルの料理を提供するお店は維持できません。
―マッチング次第で、それぞれの野菜が活きる場所があるんですね。
まさにそうなんです!そういうところに注目している人って少ないのかなと、もっとそうなったら良いなと思ったので、私の肩書は「フードコミュニケーター」にしたんですよ。
―つながり作りを目指しているご職業ですよね。
冒頭で伺ったソフトクリームもそうした想いから生まれたんでしょうか。
はい。活かされていないものをどうしたら活かせるのかと考えた中で、一つの形がソフトクリームだったんです。
葉ショウガの上の部分は生食として活かされているから、下の部分は加工して活かそうと。廃棄するだけでも手間もコストもかかるので、最低限そこを回収できるようにしようと思いました。
もちろん、原材料としての収益だけではなくて、ソフトクリームにすることで色んな人が見てくれるし、「柏ってショウガもとれるんだ」とか「本当は下の部分も食べれるんだ」と掘り下げてくれるかもしれない。そうじゃなくても、柏の農作物を使ったソフトクリームがあることで、「柏って農業やってるんだね」と気付いてもらえるだけでも意義があると思って、この形にしています。
―そのものの特性を活かしていくということは、PRの手法も変えていかなければいけないということですよね。
ええ。レストランへご紹介することもあれば、ソフトクリームみたいに広くご紹介することもあります。また、色々なメディアにより広く取り上げてもらえるよう働きかけることもあります。
-PRの方法として面白いなと思ったのですが、レンタルブルーベリーを考えられたのは森脇さんなんですよね? 柏でブルーベリーまで楽しめるとは思っていなかったのでとても驚きました。
本当ですか?狙い通りで嬉しいな(笑) ブルーベリーも出荷できない部分をソフトクリームにしていますが、それだけでは柏市内全域の使われていないブルーベリーを賄うことは難しいんです。しかも、ブルーベリーの木って、新しい品種がどんどん出てくるので、木を新品種に入れ替えていかないといけないんです。品種改良されることで、粒が大きくなったり、色鮮やかなものになったりしますので、ブルーベリー摘みをする人や消費者にとっては選択肢が増えて嬉しいことなんですけど…。
―え?元々の木はどうなってしまうんですか?
そこなんです。それで、入れ替えることになった木を鉢植えにしてレンタルブルーベリーとして市内の各所に置いてもらって、まずは柏のブルーベリーを認知して欲しいと考えたんです。今年は試験的に無償で設置していますが、有償でレンタルできれば、レンタルしてくれた人にはブルーベリーを鑑賞して摘み取って食べるというふうにより身近に楽しんでもらえますし、農家にとっては、摘み取りや販売という不安定な収入源に加えて、鉢植えをレンタルすることで安定収入を見込むことが期待できます。
―なるほど!安定収入があれば、安心して農業を続けられるし、新規就農の方にもアピールになりますよね。
―本当に農業がお好きなんだと思うんですが、もっと農業が盛んな地域に移りたいと思われたことはないんですか?
ないですね!たくさん人が住んでいて、施設も色々あって、そこに農業がある。柏の、このバランス感が好きなんです。
私は柏のまちが魅力的だと思っているのですが、その中で農業という部分があまり注目されていなくてもったいないなと!
―「農業」だって柏の売りだろうと?
そうそう!「売り」です!!
でも、農家の方たちも「農家なんて…」と引いている方が話してみると多くて。そこで「そんなことないですよ」と言っても「いやいやいや」となりますよね。それで、どうしたら価値に気づいてもらえるかなと思ったんです。お客さんから「だれだれさんのブルーベリーがここでソフトクリームになってるんだって」と言われたり、取材されたりしたらどうだろうって。
―農家の方たちって連帯感も強いから、柏の農業が取り上げられるだけでも喜んでくれそうですよね。
そうなんです。自分が取り上げられなくても、モチベーションが上がったり、嬉しく感じてくれる方が多くいらっしゃいました。一般の方も柏で農業やってるんだったら買ってみようかな、畑に見に行ってみようかなと思ってくれるかもしれないですしね。PRにも色々な方法がありますし、私の活動も多岐に渡っていて、全容がつかめないという声も多く耳にしますが、最初から動機も目的も変わっていなくて、「どうしたらもっと柏の農業がよくなるだろう」とだけ考えて日々模索しています。
―柏というまちを考えたとき、「もっとよくなる」にはどうしたらいいでしょうか?
うーん。柏って名物がないとよく言われるし、柏の人もよくそう言うんですけど、そのかわり程よく何でもあって程よく楽しめると思うんですよね。その上でもっと良くなるには、私はあるものを活かす派ですね。大規模な再開発や新しいものを産み出す努力ももちろん必要だと思うんですが、お金も時間も必要でしょうし、それよりも、今あるもので活かされていないものをうまく活用していければいいんじゃないかな。
―なるほど。活かしどころはなんでしょうね。
柏に来てすごく感じるのは「多様性」の素晴らしさです。多様性が良いことだというのはイメージとして持っていたけれど、本当に可能性がある事なんだって実感しましたね。
柏って代々柏で農家をやっている人もいれば、駅前で商売されている方もいるし、親の代に引っ越してきた人、私のように最近引っ越してきた人もいる。だけど、東京のような関係の希薄さはあまり感じない。
―確かに、柏って関係が密だったり、濃い部分がまだまだたくさんあるんですよね。けれど、自分もそうなんですけど、新参者をはじき出したりしないまちですよね。ひとまず受け入れてみると言うか。
そうそう、そうです。しかも、一人とつながるとその先の何十人と芋づる式につながっていく(笑) それってすごいことですよね。
―恥ずかしながら、最近まで柏の魅力に私は気づかなくて…。自分で興味を持たないと始まらないんですよね。
まさに、住んでるだけだと「柏って何もない」ことになるんですよね。
でも、一回何でもいいから興味を持ったり、関わりをもったりすると、どんどんハマるまちだと思います。
さきほどの「もっとよくなるためには」という質問の答えですけど、柏や柏に関わっている人が、柏に興味を持ってもらうようアプローチすることかなと思います。いろんなアプローチ方法があると思うんですけど、私は農業に可能性を感じているので、そこから柏の良さをアピールしていきたいと思います!
―なんだか遅ればせながら、柏の農業が好きになってきました!
わ~、嬉しい!!
よく「なんでそんなに農家の肩を持つの?なんで農業がそんなに好きなの?」って聞かれるんです。単純に興味があるということもありますけど、農業には可能性があると思うからなんです。だから、こだわってるんですよね。柏の農業って、もちろん問題点も改善点もまだまだあると思うけれど、完成形じゃなくて伸びしろがあると信じているんです。
―こんなに色々な形で農業が出来るまちだと知りませんでした。もしかしたら柏の人は柏の野菜で生きていけるかもしれないですよね。
それ、それなんですよ!!一度柏の自給率とか調べられないですかね。
―面白いですね!自給自足ならぬ、柏給柏足を目指して一度調べてみたいですね。
編集後記 |
「毎日楽しいですか?」の問いかけに、飛び切りの笑顔で「楽しいです!!!」と答えてくださった森脇さん。お忙しい毎日を支えているのは、きらきらした好奇心と目の前にいる人、あるものの素晴らしさを伝えたいという純粋で熱い思いなんだなと、心から感じました。森脇さん、ありがとうございました! |
今回の撮影場所:手賀沼
冒頭のお写真からもわかる通り、森脇さんは本当に手賀沼を愛していらっしゃるんです。
夏の手賀沼は蓮が有名。残念ながら開いているお花はありませんでしたが、野趣あふれる蓮たちと本当に楽しそうな森脇さんに癒された撮影でした。
早朝のお散歩にはうってつけの「リゾート手賀沼」に皆さんもぜひお越しくださいね。