公社からのお知らせ

第13回 ストリート・ブレイカーズ代表 市 村 日 出 夫 氏

 前回の寺嶋さんのご紹介により、今回はストリート・ブレイカーズ(以下、ストブレ)代表の市村日出夫さんにインタビューをお願いしました。

 ストブレは柏商工会議所青年部創立20周年を機に、若者が柏のまちをもっと身近に感じられることを目的とし、設立されました。ミュージシャンたちによる路上ライブに着目し、コンテストや各種イベントを主催。1年限りの活動予定だったのが、好評のためその後柏駅周辺イメージアップ推進協議会(※1 以下:イメージアップ協議会)の下部組織として2000年に再スタート。現在はイメージアップ協議会と共催で、毎年駅前で様々なイベントを仕掛けています。ストブレ以外にも各所でご活躍の市村さんですが、今回はストブレに焦点を当ててお話を伺いました。

 市村日出夫,ストリート・ブレーカーズ

 

氏   名

市 村 日 出 夫  ( いちむら ひでお 

肩 書 き

ストリート・ブレイカーズ 代表

プロフィール

株式会社 市村商事 代表取締役
 仕事1:京葉ツーリスト柏(海外旅行業)
 仕事2:レオニダス柏店(ベルギーチョコレート販売)

特定非営利活動法人 柏市インフォメーション協会 理事長
VINBERO 会長(創設29年目・柏のワイン会)
1955年10月柏市旭町生まれ。柏一小、柏中(野球部)
26歳:柏市柏にて海外旅行会社OPEN。
53歳:柏市柏にてレオニダス柏店OPEN。

柏商工会議所青年部で学んだ街づくりにおけるソフト事業の重要性と面白さに取り付かれ、1998年にストリート・ブレイカーズを立上げ現在に至る。

 

――ストリート・ブレイカーズ(以下、ストブレ)以外にも色々な活動に携わっていらっしゃる市村さんですが、そもそも柏のまちに関わるきっかけは何だったのですか。

きっかけは、柏商工会議所の当時の会頭、寺嶋周三さんにお声掛け頂き、商工会議所青年部に入ったことが大きいと思います。

青年部には大きく分けると、商売について学ぶ部門と、まちづくりを学ぶ部門がありました。青年部では千葉県の会長も務めたのですが、2年間で千葉県中のまち、さらには全国をまわりました。柏にいたら気づかなかったことですが、どこの地方都市でも抱えていた問題は地域の衰退や過疎化でした。そしてテーマは定番の「地域おこし」でした。そんな中、街づくりの大きなヒントとなったのは佐原の大祭(現在の香取市)でした。この伝統的な祭りに地域の若者がこぞって参加し、山車を引いたり輪踊りを繰り広げるんです。この日だけは遠くで働いている者も町に舞い戻り、町会を中心とする老若男女、子供から大人まで町じゅうが一つになるんです。本当に衝撃的でした。「では柏のまちづくりはどうするのか」この祭りが青年部20周年の大きなヒントになっていきました。

――青年部20周年の企画はすぐに決まったのですか。

1998年、ストリート・ブレーカーズの記念すべき一回目のイベント。

1998年、ストリート・ブレーカーズの記念すべき一回目のイベント。

いえいえ。1年半はずっと悩みっぱなしでした。本多前市長には「まずは動く前にテーマを決めなさい。テーマさえ決まればそこに向かって行ける。手探りでやってもまとまらないよ」と言われました。当時の市の遠山経済部長もご協力下さり、我々と同年代の市のメンバーを会員として集めて下さいました。その中で、色々と案が出たのですが、どこかでやっていることはやりたくありませんでした。みんな思いは同じで、「柏をメジャーにするにはどうしたらいいのか」と考えていて、そこには独自性が必要でした。

そこで、ビデオカメラを担いで夜の10時に何日かかけてまちなかでインタビューをしたんです。色々な若者たちの話を聞いていくうちに、まちづくりとは無縁な若者たちをに引っ張り出して、一番縁のなさそうな行政とくっつけて、なにかやらせようということになりました。「若者とまちの接点づくり」がテーマに決まったんです。まちづくりには無縁な若者が祭りの企画に参画したり、ステージにあがることで、まちと彼らが近づくきっかけになるのではと思ったのです。

ダブルデッキの上にステージと客席を作ったそうです。

ダブルデッキの上にステージと客席を作ったそうです。


――それがストリート・ブレイカーズになったわけですね。今では15年も続く、「賑やかな柏」の代表ともいえる存在ですね。

まちづくりに無関心な若者が表舞台に上がることで、まちと彼らが近づくきっかけになるのではと思いました。私たちは場を設定するだけなんです。中身は集まってきた人が作ってくれる。そんな企画に記者の反応は「なんだそれ」という人と、「面白いね!」という人がいました。でも、15年間もイメージアップ協議会と共催であり続けられるのは、単なる自己満足の会ではなく、まちのイメージアップに寄与できているということかなと思っています。

――ストブレは、企画はもちろんポスターや名前も毎回とても刺激的なものになっていますが、どのように企画は練られているのですか。

2013年のマイスター塾

2013年のマイスター塾

 ポスターは毎回「なにこれ!?」と思わせなければ意味がないと思っています。企画にしても、まちのお金を使っている以上、毎年新しいものをやっていかなくてはいけないと思っている。さぼっていたらダメです。変化の連続にしていかないと。

ストブレでは「柏マイスター塾」の卒業時に企画を発表してもらっています。でも、ここでの発表は最初のヒントとでしかなくて、それが柏に根付くのか、刺激的なのかなどを話し合って膨らませていきます。最初の提案は10分の1くらいにしかなりません。企画を壊して、また作り上げるのです。

マイスター塾から生まれた企画第1号は「ヘルシー(減脂)バトル」だったのですが、あれも「ランチはお得で美味しい。だからOLは太って困る。ランチをやるお店はカロリーなど表示するべきだ!」くらいの提案からみんなで企画を練り始めました。

――「ヘルシーバトル」は非常にインパクトのある企画でしたね。参加希望者が殺到して、大変盛り上がったと伺いました。

NHKや雑誌「クロワッサン」等でも特集されるなど、幅広い取材が入りました。柏の認知度をあげるというのが一つの目的でしたので、まさに最高傑作でした(笑)

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2008年 減脂バトルのポスター


――企画の時、何か心がけていることはありますか。

「ブームには手を出すな!」が鉄則です。どこかでやっていることをやっても面白くありません。ストブレではかなり率直に厳しく意見を言い合います。「仲がいいから否定しない」では良い企画はできない。ストブレは「お前の夢を実現させてあげる会」ではないですから。

――それだけ厳しい環境だからこそ優秀な人材が育ち、色々な場で活躍するのでしょう。

「万人が来て楽しい場所」ではないでしょうね。やりたいやつだけ来て、やりたいやつだけ残ってくれればいいと思っています。閉鎖的ではないのですが、異端児とかストイックとかよく言われますよね。

まっさらな素人でも構わないんです。「こいつ、いいな~!」という人を見つけたいと思っています。組織のトップは、「アイツほど熱いやついないよね」っていうくらい熱い人や、毎回ものすごくアイデアを出す人がなるべきだと思うんですよ。なんだか地元の名士の息子とかがなりがちなんですが、その人が向いているとは限らない。トップに向いていないからダメというわけではなくて、その人に向いていることをやればいいと思うんです。

――様々なことがあったと思うのですが、15年続けてきたストブレには大きな変化などはあったのでしょうか。

最初は柏からの発信がテーマの一つでしたから、ミュージシャンを外部から集める方法をとっていましたが、途中からやめました。内側から盛り上がって、「柏っていつも何かあるよね」と伝わっていくというのが本当の発信かなと。自然と出てきたものがやっぱり強いです。作られたものは弱いし、長く続かない。作るのではなく、まちづくりは小さな芽を見つけて育てるものだと思います。

昨年5月に行われたカシワ男子コンテスト

昨年5月に行われたカシワ男子コンテスト

ストブレも誰かがムーブメントを作ったのではなく、柏にいい風が吹いていて、ストブレはそれを見つけてうまく育ててきたということだと思います。空気感をつかんだというか。実は、あの頃偶然手にした「定点観測」(※2)というPARCOが出している街頭ファッション調査があって、その著者の方に話を聞きに行ったら「柏はこれからくる」とおっしゃっていました。ストブレも大きな結果を残してきたと思いますが、根も葉もないところに結果は出ません。柏にはちゃんとストリートミュージシャンという種があったんです。ですから、ただ「柏は有名になった」という部分だけ注目して柏と同じことをやっても、そこに種がなければ育ちませんよ。

――ストブレでは様々なイベントと同時開催するなど連携されていますよね。

ストブレの集客を当てにしているだけの団体とは連携しません。でも、一緒に盛り上がることは大切ですね。次回の拡大版ての市をやる時には銀座通りも連携する予定で、今後もいろいろな団体と連携して「町じゅうての市」へと育てていきたいです。

――最近では銀座通り商店街の活動にも力を入れていらっしゃると伺いました。

1月に行われたぎんざ青空食堂&ホコ天バザールの様子

1月に行われたぎんざ青空食堂&ホコ天バザールの様子

ええ。駅の近くはすでに盛り上がりの種がありますが、その周辺(ドーナッツ部分)をどう魅力的にするかがこれからの生命線だと、今必死に考えているところです。ストブレは始めれば動き出す人たちが多数育っていますが、銀座通りはまだまだこれからです。若手が中心となって動き出せるよう、応援していきたいと思います。

――これからやっていきたいことはありますか。

ストブレでも他の活動でも、そういうことに興味を持っている人たち、もしくは全然そういうことを知らない人たちへのきっかけ作りの場を仕掛けていきたいですね。私はソフト中心(※3)の人間で、そこに火がつけば「面白いね」と自然と人伝いで広がっていくと思っています。住む人、訪れる人が「柏って楽しいね」と盛り上がって、それが結果として何かにつながればいいんです。

――市村さん、ありがとうございました。

 

※ストリート・ブレイカーズについて補足。
ストブレはコンテストを軸とした「音街かしわProject」、民間企業やミュージシャンと協力した地域密着型レーベル「柏兄弟」、ご当地アイドルのプロデュース「カシワシムスメ」「カシワ男子コンテスト」、イベント運営ができる人材を育てる「柏マイスター塾」など多様なプロジェクトを行っている。現在10代~50代の幅広い年齢、計40名で活動している。

 

※1 柏駅周辺イメージアップ推進協議会
1998年に柏駅東西周辺の商店会・ホテル・鉄道事業者・民間事業者・柏商工会議所を会員として設立。柏駅周辺のイメージアップを図り多くの集客を目指すことを目的としている。昨年度より柏市まちづくり公社が事務局を担っている。ストリート・ブレイカーズと連携して、中心市街地へ呼び込む賑わい事業を実施するほか、ストリートミュージシャンの認定制度の運営、部会ごとに問題解決をしていくものがある。

※2 『定点観測』
パルコのファッションとカルチャーのシンクタンク『ACROSS』が東京の若者とファッションを観察・分析し、発行している。参考 http://www.web-across.com/observe/d6eo3n000004mh1v.html

 

※3 まちづくりにおける「ソフト」
まちづくり関係者の間では「ハード」「ソフト」という言葉がしばしば交わされる。明確な定義は(おそらく)ないものの、建物や道路といったハード面や、歴史文化などのソフト面を改善する事業を「ハード」「ソフト」という。ここで言われている「ソフト」はイベント、まちのイメージアップに関わる事業の意味。

市村さんからは、インタビューには載りきらないほどのたくさんのお話を伺いました。個人的な市村さんの印象は「面白いことを実現することにとてもストイック」な方で、自分にも他人にも全力な方でした。ストブレやそれと連動している「ストリートミュージシャン認定制度」は柏独自のもの文化ですが、他の自治体でも取り組みたいとアドバイスを求められることが多いという話も伺いました。柏の人にとっては当たり前の光景ですが、インタビューを聞いて続いていることの裏にはストブレや柏の団体がたくさんの努力や工夫を行っているんだなと感じました。

●今回の撮影場所:柏神社

市村さんの経営されるお店の目の前にある柏神社は、旧水戸街道沿いの銀座通り入口にある。羽黒神社と八坂神社を合祀した神社で、旧来、天王様として親しまれてきた。境内には「柏上天王横町」と呼ばれていたと記されている石碑が残っている。 
ストブレでは「音街かしわProject」と並んだ代表的プロジェクトとなっている「手づくりての市」が毎月開催されている場所でもあり、市民にとっては初詣など愛着のある場所です。

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次回のリレーインタビューは
かしわインフォメーションセンター 事務局長 宮 川 秀 勝 氏 です。

 

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